みなさんはスキムボードをオーダーしたことはあるだろうか?
カスタムオーダーというのは、要はボードを注文生産で頼むということ。注文してから生産するため、入手までには長時間を要する。海外メーカの場合は手に入れるまでに数か月掛かることも珍しくない。
なぜわざわざカスタムオーダーをするのか?
右も左も分からない初心者ならともかく、上級者ともなればボードサイズにはこだわるべきだし、レール形状や素材の違いなど色々試してみたいだろう。しかし、ショップの在庫数には限りがあり自分が望むスペックのボードにはそうそう出会えない。
そうなると例え時間がどれだけ掛かろうともカスタムオーダーは有力な選択肢と言える。
それでは、カスタムオーダーで指定できる項目をビクトリアスキムボードの場合で説明しよう。
■ベースモデルとクロスの選択
ビクトリアのカスタムではベースモデルはポリーが主となる。
ポリーはビクトリアのすべてのモデルのベースになっているフラッグシップモデル。軽く丈夫なPVCコアから削られるボードは、くせのない乗りやすいボードなので初心者から上級者まですべてのレベルのスキマーにお勧め出来るモデルだ。中上級者向けのポリー以外に、初中級者向けモデルをベースにカスタムオーダーをすることも可能なのでショップに相談してみよう。
また目的に合わせてクロスを選択しよう。
ここで言うクロスとは、ガラス繊維またはカーボン繊維で織られた布状の素材のことで、ボード全体を包み、ボードの強度を上げる重要な素材だ。
選べるクロスはEグラス、Sグラス、カーボンの3種類だ。
Eグラスはスキムボードで標準的に使用されるガラス繊維、SグラスはEグラスより少し丈夫に強化されたガラス繊維だ。Sグラスは丈夫なボードは欲しいけどボードの柔軟性にもこだわりたい方にお勧め。
カーボンはガラス繊維よりずっと丈夫で伸び率が低い素材だ。カーボンを使用するとボードが丈夫になるだけでなくボードのシナリを抑えることで無駄なロスが減り遠くの波が狙える。
なお、ビクトリアではクロスを3枚重ねてボードを作成している。Sグラスやカーボンを選んだ場合は3枚のクロスの内、1枚がSグラスやカーボンに置き換えられ、ボードのデッキ面とボトム面にそれぞれにSグラスやカーボンが1枚ずつ入ることになる。エクサイルなど一部のメーカーでは「ダブルカーボン」と呼んでいるが実際に使用しているカーボンは片面あたりに1枚でビクトリアと同様である。(ZAPの通常モデルではカーボンは片面だけなので、それとの違いを強調しているのだろう)
■サイズ
スキムボード購入においてサイズ選びは最重要事項だ。まずはボードメーカーが展開しているサイズ表から体重にあった標準サイズから始め、少しずつボードサイズを増減して自分のベストなサイズを探そう。カスタムオーダならXS~XXLの中から注文することが可能だ。
またボードサイズを標準からあえて変えることで新たなライディングスタイルが見えてくることも多い。
例えばサイズを小さくするとボードの操作がかなり早く出来るようになる。浮力が落ちるので走るスピードでカバーしたり近めの波を狙うなど対策が必要だが、波に届きさえすればターン操作が遅れがち人でもきれいなターンをしやすくなるはずだ。
逆にボードサイズを上げるとどうなるだろう。浮力や安定性が上がり遠くの波に到達しやすくなる。しかし安定性が高くなりすぎてターンは遅れがちになるので意識的にターンの開始タイミングを早めたりレールに体重を強く掛けるなどより高度な調整が必要で、ある意味、上級者向けのチャレンジと言える。(もちろん初心者が浮力を求めて大きめなサイズを選ぶのはアリ)
なお、シェイプによってはサイズ展開に制約がある場合がある。例えばフライングフィッシュはS・M・Lサイズのみとなっている。
■シェイプ
ベースモデルがポリーの場合、シェイプは数種類が用意されている。
同じモデルなのにシェイプが違うと言うのは何だかわかりにくい話だが、ビクトリアがポリーと言っているのはボードの構造や製造方法・使用素材により製造されるボードの事を言っている。
それではシェイプの説明。
リフト:
現在のビクトリアの標準シェイプ。高い浮力と素早いターンを両立させたベストシェイプ。
ボードの幅を広くすることで浮力を確保し、テール部分をやや細いピンテールにすることでレールを入れやすくターンでも小回りがきく。”幅広+細いテール”というシェイプは他にも無いわけではないがリフトシェイプでは極端なシェイプに走らず程よいバランスを保っており誰にでも使いやすい。
クラシック:
とても長い期間ビクトリアの標準シェイプであったがリフトの登場により主役の座を明け渡し、それまで特別な名前など無かったがこの時に”クラシック”と名付けられた。 長年プロライダーを始め多くのスキムボーダーに使い込まれたシェイプは癖がなく乗りやすく今も好まれている。
フライングフィッシュ:
魚の尾びれのようなテール形状をフィッシュと呼ぶ。ビクトリアではテックスプロモデルで使用している幅広なフィッシュボードが従来からあったが、このフライングフィッシュはそれよりは少し細めで普通のシェイプに近いより実用的なシェイプとして生まれた。
ジャパンタイプ1:
クラシックシェイプをベースにテールロッカーを高めに設定し、素早いターンをしやすいオールマイティボード。
ジャパンタイプ2:
マテュープロモデル(クラシックの幅を広げたモデル)をベースとしたワイドシェイプで浮力を確保しつつノーズロッカーとテールロッカーを高めに設定しスムースなターンをサポートしてくれる。
■コア
コアには高密度高強度のPVCフォームが使用される。PVCフォームとは塩化ビニール系のフォーム素材※で、サーフボードでよく使用されるウレタンやEPSよりずっと丈夫な素材だ。 ビクトリアのカスタムオーダーではコアの厚さを選ぶことが出来る。 標準は3/4インチ(19mm)で強度と浮力に優れている。もう一方の選択肢は少し薄い5/8インチ(16mm)で強度と浮力が多少犠牲となるが軽量でしなやかなボードに仕上がることで軽快な操作感を楽しむことが出来る。
※フォームとは何かしらの樹脂(プラスティック)に空気に混ぜて軽石状にした素材。空気の量と樹脂に何を使うかで重さと強度が変わる。
■レジン
レジンはエポキシとビニルエステルの2種類から選べる。
エポキシは割れにくく丈夫な素材だ。摩耗にも強いのでスキムボードには最適な素材だ。
ビニルエステルはエポキシとポリエステルの中間的な素材で強度的にはエポキシに近いとされている。エポキシよりボードが硬めに仕上がるのであえて安価なビニルエステルを選ぶ場合もある。(例:かつてのモーガンジャストプロモデルなど)
※エポキシの方が硬いのでは?と言う人も居るかと思うが、エポキシは粘りのある強さ、ビニルエステルはカラっと硬いがエポキシと比べると衝撃に弱い感じと思っていただければ。
■レール
レールの形状が薄く鋭くなるとボードのアウトライン付近の浮力が減少するので安定性が悪くなるがレールが入れやすくなる。基本的には標準仕様のハイブリッドがお勧めだが、小さめのボードの浮力を補助するためにボキシーを選ぶ、大きめのボードのコントロール性を上げるためにテーパーを選ぶ、など全体のバランスを考えてレール形状を選択すると良い。
ボキシーはレールをあまり削らずに作った角張った形状。
ハイブリッドはボキシーとテーパーの中間で標準的な形状、ノーズ側はややテーパーに仕上げられる。
テーパーは鋭く尖ったレール形状。
■レールチャネル
レールチャネルはレールに沿って掘られた溝の事。レールをグラブ(ボードを手でつかむって事ね)しやすくするのが主な目的だが、ボードにわずかな硬さもプラスする。
■ノーズロッカー
ロッカーはボードの反りの事で、ノーズロッカーは床からの高さを示す。ノーズロッカーは低い方が浮力を得られるボトムの面積が増えるので遠くの波に到達しやすくなるが、波の凹凸にノーズが引っ掛かり結果的に距離が伸びない事も多いので、低くする場合は良く考えよう。
低め:45mm前後。かつてのモーガンモデルはこの高さだった。
標準:50mm前後。ビクトリアの標準ノーズロッカー。
高め:57mm前後。浮力が少し低下するがギャップ越えは楽。
■テールロッカー
テールロッカーはボトムのテール部分をわずかに削ることでターン時などのテールの引っ掛かりを無くし素早いターンをしやすくする。ただしテールロッカーが強いと浮力が少し低下する。
フラット: 0mm
標準 : 1.5mm程度
高め : 3mm程度
■デッキ仕上げ
ノーグロス:
ノーグロスはビクトリアの標準であるツヤなしの仕上げ。デッキでサンドペーパーでならし軽いコーティングで仕上げている。見た目はやや荒いが軽量に仕上がる。
グロス:
グロスはツヤあり仕上げ。やや重くなってしまう傾向がある。
テクスチャ:
テクスチャはクロスの目が浮き出た、非常にザラついた仕上げ方法。軽量かつ丈夫に仕上がるがデッキパッドが剥がれやすい欠点がある。
カスタムオーダーではカラーやアート(模様の事ね)も当然指定出来る訳だがちょっと長くなったのでまた今度。。。 それでは皆さん、自分だけの自慢のボードを手に入れてハッピースキムを!
ビクトリアスキムボードのカスタムオーダー http://www.skim1.com/brand/vic/custom1/index.htm ビクトリアスキムボードジャパン http://victoriaskimboards.jpskim.com/